リレーコラム第1周『うさギ誕生秘話』


うさギ誕生秘話

いきなり趣味の話、しかも変なうさぎの誕生秘話と言われても、そもそもあなた誰よという感じだし、誕生秘話というのはのちのち語られれば良いことじゃないか ……などなど、様々なつっこみが飛んできそうであるが、あえて書かせていただきたいと思う。「うさギ」はわたしの分身と言っても過言ではない。うさギのルーツを語ることは、わたしを語ることに等しい。

わたしは小さい頃から絵を描くのが好きだ。物心つく頃にはすでに「お絵描きが好き」という気持ちがあった。お絵描きは心安らぐ趣味として、ずっとわたしを支えている。ちなみに、ここで言う「絵」とは本格的な油絵やデッサンではなく、あくまでイラストである。そしてわたしの絵は、自分が触れているものや置かれている状況にいつも影響を受けている。


No 自由帳 , No school life .

幼稚園生の頃は絵本やキンダー社のワンダーブックで育ち、小学1年生になると母から読書の愉しみを教わった。この時代は本の挿し絵のような、あえて言うなら1コママンガのような、お話の1つの場面を切り取って絵を描いていた。題材は、読んだ本やアニメから取られることもあれば、自分の想像の世界からストーリーが出てくることもあった。当時使っていた何冊にも及ぶスケッチブックはまだ保存してある。

小学3年生の時に小学生新聞を取り始めて、初めてマンガに触れた。小学生新聞にはニュースや学習のページ、連載小説の他に日替わりで何種類かのマンガ連載があるのだ。愉快なキャラクターたちが枠をまたいで話を展開させていく様子に惹かれ、まもなく自分でも自由帳に描き始めた。最初は大好きなキャラクターであるペンギンのピングーが主人公だったと思う。2作目は登場人物も自分で考えて完全にオリジナルな作品になった。しかしだいたい数か月描くと、話のつじつまが合わなくなり、こんなんじゃだめだ、と連載は突然中止されて、そういえばこの前から温めていた話を描いてみようか、というような感じで新作を描き始めては、また中止になってしまう、というのがパターンだった。今もその自由帳はすぐ手が届くところに置いてあるが、我ながらストーリー展開がひどい。無茶が多い。


空想が止まらない

中学に入ってからは、小学6年生の時に描き始めたマンガを完成させたい気持ちをずっと持っていたものの、日曜大工ならぬ休み時間絵師だったため、読書を優先したら描き進める時間がなくなってしまった。代わりに、授業中プリントの空きスペースに落書きをするようになる(もちろん先生には内緒だ)。これから描くつもりのシーンで出てくる登場人物、それは主に同世代の少女だったが、また昔の1コママンガのように気楽に描いていた。この頃描いていた作品には、ビクトル・ユゴーの『あゝ、無情』、二ノ宮知子の『のだめカンタービレ』、エーリヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』、コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』などにインスパイアされた登場人物が出てくる。オリジナル作品をうたっておきながら、その頃読んだ本のキャラクターがあまりにもそのもので登場してくるのがわたしの作品の特徴だ。『名探偵マリーと謎の金髪美人』というタイトルのそのマンガは唯一飽きずに描き続け、なおかつ完結しないまま今も長い休載期間の最中である。


シンプルな絵柄を求めて

そして中学3年になって、もっと簡潔でストレートな主張をする絵を描きたいと思い始める。つまり、オリジナルのマスコットキャラクターがほしくなったのだ。同じく絵を描くのが好きな友人が、ささっと動物のイラストを描いたのを見て、心底うらやましくなった。自分にもオリジナルキャラクターはたくさんいる。しかしどれも人間かせいぜい猫人間なので描くのにいちいち時間がかかる。友人の絵を見て、その時間がじれったくなった。また、人の絵は描ける時描けない時のムラが激しく、例えば「絵を描くのが好きです」と自己紹介をして、じゃあ描いてみてと言われた場合にうまくいかないと、面倒なことになる。そこで、即戦力になるのはマスコットキャラではないかと考えたのだ。

そこから試行錯誤が始まった。と言っても音楽と違ってあくまでも趣味なので、そんな真剣に紙と向かい合ったわけでもないが、アイデアが降ってくるのを待っていつもアンテナを伸ばしていた。はじめはきつねのキャラクターが生まれた。金釘文字の進化系のよつな絵柄にしたのでえらく短時間で描ける。しかし汎用性に欠け、これはつまらんと思ったわたしは、先の友人のことを思い出した。彼女はわたしを動物に例えるとうさぎだと言いながらうさぎのイラストを描いてくれた。そうだ、オリジナルキャラクターなんだから、わたしの代わりに紙の中で動き回ってくれる、自分にとって愛おしい存在にしたい。こうして生まれたのが「うさギ」の前身だ。


空飛ぶうさギ

突然の思いつきでマスクとゴーグルを被せ、ライト兄弟が作ったような飛行機に乗っている設定にした。名前がなかなか決まらず、しばらくはラピと呼んでいた。うさぎと共に高校に入学し、さらに2年かけて、マスコットキャラクターの肩書きに耐えうるだけの個性を磨き、絵柄の質の向上に努め、安定して描けるようにした。おそらく高校2年生の頃に、うさぎと呼ぶようになり、ひとひねり入れようとひと文字だけカタカナにした。全部試した結果「うさギ」が一番しっくり来たが、安易な名前なのは否定できない。

高校2年生の1月、卯年がやって来た。それまではインディーズの状態だったうさギを、年賀状に採用してメジャーデビューさせた。以来、このキャラクターはわたしの持ち物を彩り、卯年でなくても年賀状を飾っている。また、わたしの友人のロッカーの扉にステッカー風のイラストを貼り付けたりして、大学の中に何匹か棲息している。今年からは季節ごとにテーマを設けることにした。2013春夏コレクションは『うさギの水兵さん』である。


新・3大「美しいもの」

絵を描くことと、数学と音楽がずっと好きだった。好きになるのは理性ではなく感性の問題だから理由もなにもないのが、あえて言うなら、世界共通言語であるところかもしれない。三大「言語を超えるもの」は絵と数字と音だと思う。神さまはバベルの塔を壊しても、本当に美しいものは残してくれたわけだ。

……とまぁ、初回からいきなりマイワールド全開で書いてしまいましたが、みなさまはじめまして。わたしは原田真帆といいます。現在、東京藝術大学の2年生でヴァイオリンを専攻しています。もともとは一生続けられる趣味を持たせたいと考えた両親の勧めでヴァイオリンを始めましたが、そのうち音楽を自分の仕事にしたいと思うようになり、この道を選びました。

このように好きなテーマで書いた文章を人前で公開することは初めてで、正直なところ大変どきどきしていますが、このリレーコラム、わたしのページでは、音大生はらだが日常の中で思ったことや考えていることを綴っていきたいと思います。みなさまに楽しみにしていただけるようにがんばります。どうぞよろしくお願いいたします。


ーWebアッコルド「音楽 × 私」より 2013年8月14日掲載


リレーコラム共通質問

Q:子供の頃の夢は?

A:指揮者。 小さい頃の夢について、今でもはっきりと憶えている出来事があります。幼稚園年中の頃、将来の夢をテーマに版画にしたことがありました。A5くらいの発泡スチロールに鉛筆で溝をつける、とても描きやすい版画です。その時わたしは何の迷いもなくオーケストラの前に燕尾服を着て立つ自分の図、つまり指揮者を描きました。理由は憶えていないけれど、もしかしたら描いた当時も特に考えはなかった気がします。ひとりひとりに声をかけて回っていた先生に、まほちゃんはヴァイオリンをやってるんだもんね、と言われて初めて、あぁヴァイオリンはどうしようと思いましたが、まぁなるようになる、最終的にはどっちもやればいいや、と思って、わたしは再び絵を描き始めました。楽観的な子です。その絵は残っているのかわかりませんが、わたしの記憶の中にはしっかり焼きついています。今も再現できるレベルで。いや再現しないけれど。版画は大変なので。

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